「野垂れ死にも自己責任の国」に、もうなっている
気になっていたAさんを訪ねた。
ドアをノックして呼ぶと、「きょうは調子が良くねえんだ」といいながら、6畳一間なのに、20数えるくらいの時間をかけてドアまでたどり着き、内カギを開けてくれた。
体の向きを変えようとしてフラついて倒れそうになる。支えるため右腕をつかんだとき、骨をじかに触れたような気がした。「きょうはもう6回も転んだよ」という。
Aさんは、家賃を滞納し、電気もガスも止められて、部屋には裁判所の強制執行通告書が張られた状況で相談にきた。いま、管理人さんのいるアパートで暮らしている。いや〝生きている〟。
きのう「これ以上の生活保護制度の改悪を許せば、野垂れ死にも自己責任の国になる」と書いたが、もうすでになっている、と訂正したい。
横浜市で77歳の母と44歳の知的障害のある息子が死んでいた。札幌市では40代の姉妹(妹は知的障害があった)が、立川市では40代の母と4歳の障害児が、さいたま市では60代夫婦と30代の息子が…。いずれも、行政とのつながりはあった。あったけど、あえて電話したり、訪問してまでは支援できない。行政職員はみんな忙しい。
電力会社だって、料金を滞納されれば止める。ガス会社だって止めるのは当たり前だ。いちいち相手に同情してサービスなどしていたら、株主に申し訳が立たない。裁判所の執行官だって、住人がこの先どうなるかなんて考えていたら仕事にならない。しかし、そうだろうか。
日本国憲法には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(第25条)とある。その憲法の規定に基づく生活保護法には、その第7条で「…要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる」と、わざわざ職権による保護も規定されている。
この憲法が要請している社会は、たとえば、電力会社もガス会社も、大家さんも近所の人も、裁判所の執行官も、市役所に電話をする。「電気代も、ガス代も、家賃さえ払えなくて苦しんでいる人を見つけました。すぐきてください」。「さあたいへんだ」と、役所からケースワーカーが駆けつける。こんな社会だと思う。「空想」だ、「理想論」だと思いますか?
この国では、戦後の一時期を除いて、日本国憲法を学校でしっかり教えてこなかった。逆に、教えないようにしてきた。世界に誇る憲法として、小学校から大学まで段階に応じてしっかり身につけることがされていたら(日本以外の国では当たり前だと思いますが)、私の「空想」は現実になっていたはずだ。
Aさんは「最近、物忘れがひどくなっちゃって」という。それは、会ったときにすぐ気づいた。「あさってまた顔を出すからね」といって別れたが、覚えているかどうか。
by pikaitih
| 2012-03-21 22:29
| 政治と社会
【ぼくはきっとできるとおもう。なぜならぼくらがそれをいまかんがえているのだから】 賢治の童話の中のことばです。阻んでいるのは1%。99%が求めているのですから、きっと!
by pikaitih
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『がんセンター院長が語る 放射線健康障害の真実』(西尾正道、旬報社)
『いまこそ私は原発に反対します』(日本ペンクラブ編、平凡社)
『チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害』(核戦争防止国際医師会議ドイツ支部、合同出版)
『新自由主義からの脱出 グローバル化のなかの新自由主義VS.新福祉国家』(二宮厚美、新日本出版社)
『福島第一原発 真相と展望』(アーニー・ガンダーセン、集英社新書)
『地震考古学』(寒川旭、中公新書)
『大地動乱の時代』(石橋勝彦、岩波新書)
「福島の教育現場から」(小川憲二『経済4月号』)
『日本の巨大メディアを考える』(志位和夫)
『新福祉国家構想1 誰でも安心できる医療保障へ』(二宮厚美他、大月書店)
『いまこそ私は原発に反対します』(日本ペンクラブ編、平凡社)
『チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害』(核戦争防止国際医師会議ドイツ支部、合同出版)
『新自由主義からの脱出 グローバル化のなかの新自由主義VS.新福祉国家』(二宮厚美、新日本出版社)
『福島第一原発 真相と展望』(アーニー・ガンダーセン、集英社新書)
『地震考古学』(寒川旭、中公新書)
『大地動乱の時代』(石橋勝彦、岩波新書)
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